後天性免疫不全症候群(エイズ)【病気と免疫力】


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   後天性免疫不全症候群(エイズ)

エイズは免疫システムの司令官ヘルパーT細胞を狙って襲いかかり全く無力にします。その結果、ほかの免疫細胞は路頭に迷い、感染症にかかりやすくなってしまいます。HIVは免疫システム自体を破壊し、不全にするウイルスなのです。

エイズ(AIDS)とは、後天性免疫不全症候群(Acquired Immunodeficiency syndrome)のことで、その病原体は、HIV(Human Immunodeficiency Virus:ヒト免疫不全ウイル=エイズウイルス)です。日本のHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者・エイズ患者は年々増加し、平成17年8月までの累積数は、HIV感染者が約7000人、エイズ患者が3000人を超えています。世界の患者数は770万人以上、感染者数は2790万人以上と推計されています。

HIVが狙い撃ちするのは主としてヘルパーT細胞です。T細胞は免疫系の主体となる細胞で、胸腺で養成されます。胸腺では目印のようなものがつけられますが、ヘルパーT細胞の場合はCD4というタンパク質です。

HIVはヘルパーT細胞の表面のCD4という目印に結合し、ヘルパーT細胞内に侵入します。通常遺伝子といえばDNAですが、HIVの遺伝子はRNAです。このRNAが逆転写をされてDNAになり、ヘルパーT細胞内のDNAに入り込みHIVは、細胞の中でじわじわ増殖を始めるのです。増殖したウイルスは、やがてヘルパーT細胞の指示機能をマヒさせてしまいます。

以上からヘルパーT細胞は、敵を直接攻撃するキラーT細胞や武器をつくり敵を攻撃するB細胞などの援軍に指示を出して呼ぶこともできなくなります。ですから、キラーT細胞もB細胞も指示を受けられないためどうしたらいいか分かりません。その結果、HIVばかりでなく体内のウイルスもどんどん繁殖を続けます。やがて感染したヘルパーT細胞は死滅し、HIVは別のヘルパーT細胞に向かっていきます。

ヘルパーT細胞の司令官の機能がマヒすれば身体の免疫システムは崩れ、感染抵抗力が弱くなり、普段は無害な細菌やウイルスなどが症状をもたらす日和見感染症に侵されてしまいます。

代表的な日和見感染症としては、カリニ肺炎、トキソプラスマ症、結核、ヘルペスウイルスやサイトメガロウイルスなどによるウイルス感染、カンジダ症などで、悪性腫蕩のうち代表的なものはカポジ肉腫です。中枢神経系の異常では、髄膜炎、脳炎、大脳皮質の萎縮による認知症などが見られます。

エイズになってもHIVは感染者の細胞の中で生きることしかできませんので体内で惑染してからもすぐに死に至ることはなく、何年もHIVの潜伏した期間を保ちながら、免疫不全状態に陥れるのです。
単にHIVに感染しただけ(HIVキャリア)ではエイズとは呼ばないそうです。

HIVに対するいろいろな薬剤は開発されていますが、これといった特効薬はないようです。これはHIV自身が遺伝子を変化させて表面のタンパク質の形を変えてしまうためです。何度もウイルス自体の構造を変化させ、日々変身しながら抗体や薬剤の攻撃からのがれているずる賢いウイルスといえるでしょう。

なるほど、HIVとは厄介なウイルスですね。感染しないよう予防に努めることが肝要でしょうね。


【補足】
HIVに感染しているかどうかの診断には、ヘルパーT細胞が指標になるそうです。感染者の血液・精液・膣分泌液や母乳に多く含まれているので感染は、輸血や注射器、セックス、授乳を介して成立するといわれています。尿や唾液に含まれているHIVは微量なので感染することはないようです。
HIVに感染しても直後(1〜2週間後)に風邪に似た症状が出る程度のため、感染者本人さえも気づかずに性交渉などによって他人へ感染させてしまう危険性があります。

  
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